―――三橋ィ、怒んないって云ってるだろ。ほらオレの顔ちゃんと見てよ。これが怒ってる顔? ほらな、違うだろ? オレは三橋のこと怒ったりなんかしないよ・・・・・・まぁ、三橋がとんでもなく悪いことしたって場合とかなら別だけど。でも三橋はそんなことしないだろ? ・・・しないよ、三橋は、絶対そんなことしない。オレにはわかる。え、何でかって? ・・・う〜んどうしよっかなあ。三橋には教えちゃおうかな。・・・オレ、エスパーなんだ。―――わっそんなびっくりすんなよ。嘘だってば。ごめんごめん。まさかひっかかるとは思わなくってさ。でも三橋のこと何でもわかるってのはホント。知りたい? あはは、そんなに首振ると取れちゃうぞ。・・・だから嘘だって。そんな簡単に取れないよ。あーもうほんとにかわいいなあ三橋は。
―――こほん、まぁそれはさておき。ほら、オレの目をちゃんと見て、三橋。云いたいことあるなら、さっさと云っちゃいなよ。我慢はカラダに悪いんだからな。シガポにもきっと怒られるぞ。あっこら、うつむかない! ビシッと前向いて!背筋伸ばして! ・・・よしよし、やればできるんだからな三橋は。あ〜三橋の髪の毛ってふわふわだなぁ。すごいいい手触り。
あーほら、泣かないの。落ち着いて、少しずつでいいからさ、話してごらん。オレはずっと三橋の傍にいるよ。手、繋ご。ぎゅってしてやるからさ。それで三橋の手があったかくなる頃には、三橋もきっと話せるようになるよ。それまで待ってるよ、ずっと、ずっと。
* * *
―――で、結局何だったわけ? ・・・オレに、辞書返すの忘れてたから? うん、それから・・・・・・? え、それで終わり!? まじかよ〜・・・ああっだから怒ってるんじゃないってば! こんなの悪いことのうちに入んないよ。バカだなぁ三橋。・・・や、そこは肯定するとこじゃないから。
いい? 三橋、お前はオレのことほんとに信じてる? 好きって思ってくれてる? ・・・うん、ありがと・・・オレもね、三橋のこと好きだよ。すごくすごく好き。だから、こんなことくらいで怒ったりなんかするわけないよ。そりゃ全然全く怒らないなんて聖人君子様にはなれないけどさ、三橋の前ではカッコつけたりするかもしんないけどさ、それでもオレは三橋のこと好きだから、赦し合いたいって思うし、分かり合いたいって思うよ。三橋は違うの? ・・・うん、そうだよね。確かに辞書借りて返せなくって、オレが授業のとき困ったろうな、悪かったな、って。そう思ってくれるのは嬉しいよ。でも、オレってそんなに信用ない? 怒らないって云っただろ。三橋のことちゃんと、すごく好きだって。だからさ、もっとオレのこと信じてよ。頼ってよ。そりゃちょっとは困るかもしんないけど、オレは授業で当てられて困るのより、・・・三橋がオレを避けて目も合わせてくれない方が困るし、ずっとずっと悲しい。
だから、何か困ったことがあったらちゃんと云ってよ。オレの目を見て。手、握ってさ。
三橋と一緒にいられなくなるのは嫌だよ。三橋は・・・うん、ありがとな。ほら、やっぱり通じ合ってる方がいいだろ。二人なら、嬉しさだって二倍なんだ。
・・・そろそろ戻ろう。みんな心配してるよ。
戻ったら、まずみんなに、謝ろう。心配掛けてごめんってさ。オレらのこときっと心配してる。それは怒ってるからじゃないけどね。―――友達だからだよ。
さっ早く帰ろう。オレたちの新居にさ! ・・・手は繋いだままでいいよ。ははっ三橋、ほっぺ赤いぞ。え、オレも耳、赤いって? わっほんとだ。でもこれはウレシイんだよ。だって三橋と仲直りできたもんな。
ほら、三橋急げ!ダッシュ!! あんまり遅いとモモカンに頭握られちゃうかもよっ!!
・・・ああ、さっきの。何でオレが三橋の考えてることわかるかって?
そんなの決まってるよ。オレが三橋のこと好きだからに決まってるだろっ!
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