泉孝介の9組(主に三橋)観察日記

月曜日。 晴れ。

 なんか知らんが、今日からうちのクラスの観察日記を書くことになった。おれらはドーブツか、とも思うけど、若干それに近いようなやつらがいることは確かなのでしぶしぶ受けることにした。でもほんとしぶしぶだから。すげーめんどくさいけど、花井が死んだら困るし。ストレス性の胃痛とかそーゆーんで。
 昨日、試合が終わったあとに花井に呼び出されて、このノートを渡された。なにかと思ったら、9組でおまえらがどんな感じなのかキャプテンとして知っておきたいから、とりあえず今日から一週間日記をつけてくれ、とか云い出すから、とうとうどっかやられたか?と心配になったけど、ものすごく云わされてる感丸出しなうえに、物陰からどっかの捕手がこっちを(ってゆーか花井を)射殺しそうな目で睨んでいるのに気付いて、それでなんかすべてを察して引き受けてやることにした。9組もあいつらのメンドーみんので相当めんどくせーけど、7組じゃなくてよかったとおれは心底思った。がんばれ花井。

 とは云ったものの、なにを書きゃいいのかさっぱりわからん。ストーカーどっかの捕手が何を求めているのか知らんが、そんなストーカーを喜ばすようなことは書く気がおきないし、書こうとは思わない。田島あたりに頼んだらコクメイに書いてくれるかもしんねーけど(昨日何回(自主きせい)したとか)、一日目で書くのに飽きそうだ。だってあいつらノートだってちゃんと取ってなかったりするし。

 朝練が終わった。もうすぐHRが始まるけど、三橋も田島も寝ている。三橋が腕を下にして寝てたので、代わりに浜田のカバンをつっこんでおいた。おれも眠い。ので寝る。続きはまたあとで。

 いまは2限と3限のあいだ。田島と三橋が早弁をはじめた。このペースで行くと昼にはほとんど残ってなさそうなペース。昼練がある吹奏楽とか運動部系も早弁をして、教室はなんか食い物くさい。おれも食わないかと聞かれたけど、今日は買い弁だと云うと、三橋が唐揚を、田島がこぶ締めをくれた。お礼にあとでなんか分けてやろう。とりあえず昼休みは購買へダッシュなのでいまのうちに気力を蓄えておく。ということで寝る。おやすみ。

 5限の授業中。古典。クラスの半分くらいが寝てる。この授業は出席番号順に当たるから、それさえクリアすればだいたい平気。おれは先週当たったばっかだし、まだカ行なので田島もまだ安泰。まああいつは当たりそうでも寝てて、となりの席に起こされてるのが常なんだけど。
 4限はちょっと早めに終わったので、結構余裕で飯を買ってこれてよかった。飲み物は持ってたから弁当とパンとヨーグルト。教室に戻ってきたら、リチギに三橋と田島が食わずに待ってたので、浜田も加えて、ホルモンを活発にしてから食い始めた。田島がバカでかい声で叫ぶので、周りでクスクス笑いが聞えるけど、おれはもう慣れたし、クラスのやつらももう慣れてるのであまり気にはならない。ほかのクラスでも野球部のやつらはちゃんとやってんだろーか? 花井、おまえんとこはどーよ。栄口と巣山は小声でやってると云っていた。「阿部は無言でやってそーだよな!」と田島が云うのに納得したけど、それって結構こわいよなというのが結論。(無言でベントーにらむ男ってどーなんだ)
 田島にはクリームパンを指ひとつぶん、三橋にはヨーグルトを分けてやった。スプーンをひとつしかもらってこなかったので、食べさしてやってたら、なんか小鳥にエサをやってる気分になった。おもしろくなって、ずっとやってたら、女子に「泉くんってほんとに三橋くんのおかあさんみたいだね」と笑顔で云われた。自覚はあるので云い返せない。だってこいつほんとに小動物みたいなんだもん。
 それからなぜかクラス中で飼ってるペットの話になって、挙手で投票まで始まった。うちのクラスは飼ってるやつと飼ってないやつは半々くらい。やっぱり犬と猫がダントツだけど、鳥も何気に多かった。インコとかオウムとかシジュウカラとか。鳩っていうやつもいた。伝書鳩コンクールに毎年出てるらしい。へぇー。次の大会にはみんなで応援に行こうという話になった。
 あとイグアナを飼ってるってやつがいて、すげー!と盛り上がった。ちゃんと手に乗ってきたりするんだと。そういえばイグアナになっちゃうドラマなかったっけ?菅野ミホが出てるやつ、と誰かが云いだして、それから懐かしいドラマの話になった。ペットは何処いったんだと思ったが、犬の話をしている間中ずっと三橋がぶるぶる震えてたから、まあよかったかなと思って追求はしなかった。
 それにしてもなんでそんなに犬がダメなのか三橋にきいたら、小さい頃にでかいゴールデンレトリーバーに追い掛け回されて、町中を逃げ回ったらしい。あれは人懐っこい犬だからきっと本人(本犬?)はじゃれてただけなんだろうけど、そりゃトラウマになりそうだなと思った。すげーでかいし。そしたら浜田が「三橋はむかし細くてちっこかったしな〜たんぽぽの綿毛みたいに飛ばされそうだった」「初めて三橋に会ったときは妖精かと思って(以下略)」とかちょっと電波なことを云いだしてうざかったから蹴っ飛ばしてやったら、悶絶してた。弁ケイの泣き所に入ったっぽい。椅子から蹴り落とさなかっただけありがたいと思え。

 この授業が終わったら練習だ。ということで今日の日記はこれで終わり。こんな感じでいいんかな? よくわからん。


(以下、本文に続く)



こんな感じで月曜から日曜まで書いてあります。
2007.11.11発行