ブラコンと親友と行列スイーツ


 アテムは、ボクの双子のきょうだいだ。
 いつも、何処に行くときも一緒にいるくらい仲良しだったけれど、小学生にあがった頃になって、ようやくそれはすこしおかしいんじゃないかとボクは思い始めた。
 アテムはかっこよくて、頭もよくて、自慢のきょうだいだったけれど、ちょっと・・・いや、かなりブラコンなのだ。それも、アテムくんは遊戯くんのことがほんとにだいすきなのね〜、っていう愛らしく子どもらしい甘えとかそういうんじゃなくて、もうボク以外は歯牙にもかけないっていう勢いの。
 アテムはものすごくやきもちやきで、狭量なところがあって、そういうところはいつもボクの周りに対して発せられる。ボクがだれかと話していると、決まって遮ろうとしてくるし、ひどいときには相手のことを射殺しそうなほど壮絶な目で睨みつけてくる。ボクがやめてよって云っても、あんなやつは相棒(アテムはボクのことをこう呼んだ)にふさわしくないとかなんたらかんたら、とへんな云いがかりをつけてくるので、ボクは中学に入るまで友だちもあまりつくれなかったくらいなのだ。アテムは一匹狼なところがあるし、「おれは相棒さえいればそれでいいんだ」と、こっちが耳タコなほど云うばかりなので、クラスで浮こうがどうなろうが関係ないみたいだけれど、ボクはちがう。そりゃ子どもの頃はボクもアテムさえいればいいかなと思っていたけれど、大きくなっていくにつれて、ボクたちのこの状況はどう考えても異常なことに気付いたのだ。いつまでも世界は閉じた箱庭ではない。ボクのことをちょっとからかった子を病院送りにしたり、遊びに誘ってくれた子を脅しつけたり、そんなふうじゃいけないのだ。
 だからボクは中学はアテムと別の学校を受けることにした。おなじ家に住んでいるのだから(そのうえアテムはボクにべったりだ)、ばれないようにするのは大変だったけれど、受験の日(ボクとアテムは私立中学を受けようとしていた)にボクは答案用紙を白紙で提出した。結果は見事ペケ。もちろんアテムは云うことなしの満点合格だった。
 隠しに隠し通して、入学式の前日に、実はボクはアテムとおんなじ中学には行かないんだ、と云うと、アテムは目を見開いて、この世の終わりみたいな顔をした。泣いて、怒って、怒鳴り散らして、自分もボクと同じ公立に通うと云い張ったけれど、それはかなわずにアテムは最初から希望していたとおりの私立中学に通うことになった。
 アテムの学校行事の写真はほとんどなく、あったとしてもひどくつまらなそうな顔で遠くを見ている写真ばかりだ。それを見るたびボクはとてもかなしくなる。でも、ボクはアテムのことがだいすきだから、だからこそちょっと“ボク離れ”をしてほしかったのだ。アテムはボクさえいればいいと云うけれど、いつまでもそんなわけにはいかないし、そのせいでアテムが孤立してしまうのはたまらなかったから。

 でも、別々の中学に入学してもアテムのブラコンっぷりは変わらず、それどころか前よりもひどくなったかもしれなかった。アテムは毎朝ボクの中学までボクと一緒に来たし、帰りも毎日迎えにきた。子どもじゃないんだからひとりで大丈夫だよと云ってもアテムは頑として聞き入れなかった。「学校にいる時間は一緒にいられないんだから、それ以外の時間は一緒にいたいんだ」と真剣に、そしてひどく哀しそうに云う瞳に、ボクもそれ以上なにも云えなくなってしまった。ボクが、彼のことを心配してやったことだとしても、ボクがアテムを裏切り、傷つけてしまったことには変わりないのだから。
 アテムは、自分の中学のことはほとんど話さなくて、ボクの話ばかり聞きたがった。今日はどんなことを習ったんだ?なにをした?誰と話した?昼ご飯はなにを食べた?なにか変わったことはなかったか?
 まるで事情聴取みたいなことを、部屋のベッドのうえで、ボクにすがりつくみたいに、背中からぎゅっと抱きしめながら訊ねてくるのだ。アテムは隠し事をされるのがなによりも嫌いで、ボクが質問に一から十まできちんと答えるまで、決してボクを離そうとしなかった。そして、ひととおりその日の出来事を聞くと、やっと満足したように頷き、決まって同じことを訊ねてくるのだ。
「・・・相棒、今日はたのしかったか?」
「うん、たのしかったよ」
「学校はすきか?」
「すきだよ」
「―――じゃあ、おれのことは?」
「もちろんだいすきだよ」
 そうしてボクが頬にキスをしてあげると、ようやく安心したように笑うのだ。
 ボクはほかのうちのことを知らないから、アテムはちょっと甘ったれすぎるかもしれないけど、でも、きょうだいってみんなこんなものなのだろうと思っていたので、ふとしたときにこのことを云うと獏良くんに妙な顔をされた。
「・・・それは異常だね」
「えっ、そうなの!?」
 獏良くんは二年生のときにボクのクラスにやってきた転校生で、それ以来の親友だ。見た目は天使みたいで、まさしく薄幸の美少年といった感じなのに、結構口が悪い。自分の思ったところをすぐに口に出すので周りのひとを辟易させたりもするけれど、ボクは獏良くんのそんな裏表のないところがすきだ。それに、お互いゲームマニアなので、そのことで出会ってすぐに意気投合したのだ。学校には、新作ゲームソフトはやるけれどTRPGの存在すら知らないというひとたちが多かったのに、獏良くんは自分でいちからTRPGをつくったりもしているらしい。すごい。いつか獏良くんの家に遊びに行きたいなと思うんだけれど、アテムがなかなかゆるしてくれない。
 お昼休み、獏良くんは板チョコをばりばり豪快にかじりながら云う。
「ぼくにも弟がいるけど、そんなこと絶対にしないよ。っていうかやったらはったおすけどね」
「えっ、獏良くん弟がいたの? いくつ? 獏良くんに似てる?」
 ボクが驚いて訊くと、獏良くんはつまらなそうに紙パックの紅茶をゆらしながら答える。
「同い年。顔は・・・つくりは一緒なはずなんだけどね、いちおうおんなじ受精卵から発生した代物だから。でも可愛げは欠片もないよ。目つき悪いし、態度悪いし、頭も悪いし。一卵性双生児っていっても、別の人間なんだから、そう似てるわけがないよ。遊戯くんたちだってそうでしょ?」
 いつも学校の送り迎えに来てるの見かけるけど、アテムくんと遊戯くんって似てないよね。
 獏良くんが云うのに、ボクも頷く。
「うん。ボクも、ボクとアテムって似てないと思う」
 いろんなところがまだ丸っこいボクと違って、アテムはどこもかしこもシャープな印象だ。目だってキリッとしているし、背だってボクより高い。つくり自体は一緒なはずなのに、神様って不公平だ。
 アテムは身内のボクから見てもすごくかっこいいのだ。街を歩いていてもしょっちゅう女の子に声をかけられているし、バレンタインには郵便ポストがチョコとラブレターがいっぱいだし、電話もひっきりなしだ。アテムは迷惑がって不機嫌さを隠そうとしないけれど、それでもめげずにアプローチしてくる様子には感心してしまう。女の子のバイタリティってすごいよな。
 ボクも昔はよくアテムへの繋ぎを頼まれることがあったけれど、そうするとアテムは烈火のごとく怒り、たとえ相手が女の子だろうと容赦せずに怒鳴りつけるので、いまではそういうことはない。
「似てないほうがいいよ。遊戯くんはそのままがいちばんだと思う。アテムくんってプライドめちゃくちゃ高くて、クールなくせに遊戯くんのことに関してはめちゃくちゃ狭量で嫉妬深くて、遊戯くんさえいれば世界はどうなろうと関係ないって感じでしょ? そこまで思い切れるのは潔いと思うけど、人間としては結構ダメダメだよね。いい加減遊戯くん離れしたほうがいいと思うけど、それもあの様子じゃ難しそうだよねぇ。たとえそう云っても、『おまえはおれのことが嫌いになったのか』だとかこの世の終わりみたいな顔で縋りついてきそうだし」
 つらつらと云い放つ獏良くんに、ボクが唖然としていると、ああ、と獏良くんは手を振った。
「気を悪くしたらごめんね。ぼくも遠目で見た印象だけで好き勝手云ってるだけだからあんまり気にしないで」
 その言葉に、はっとして、ボクは首を振る。
「やっ、ううん、違うんだ。あんまりにも獏良くんの推察が当たっててびっくりしただけ」
 すごいね、獏良くんてエスパーみたいだ、と感心すると、獏良くんは苦笑した。
「・・・まあ、あれだけべったりな様子を見てれば誰だってわかるよ。アテムくんの学校って、ここから電車で三駅行ったところなんでしょう?」
「うん。あと歩いて10分くらい」
「それなのに毎日うちの校門まで送り迎えしてくれて、それから自分の学校へ行くと」
「うん・・・・・・別にいいって云ってるんだけどさあ・・・」
 アテムって過保護なんだよね、とボクが云うと、過保護っていうレベルをはるかに超えてるよねそれは、と呆れたように獏良くん。そしてストローを口に咥え、考え込むように眉間にしわを寄せた。ちょっとした間のあと、はあ、という溜め息と共に獏良くんは口を開く。
「・・・あのさあ、遊戯くんは知らないかもしれないけど、うちの学校ってこのへんの学校じゃいちばん始業時間が遅いんだよね。そのくせ終業時間はいちばん早いの」
 まぁそれに惹かれて、この学校に入ったんだけどねぇ、と云う獏良くんの意図がつかめなくて、ボクが首を傾げると、獏良くんは、つまりね、と口を開いた。
「つまり遊戯くんを送ってきたアテムくんがどんなに急いで自分の学校に向かったとしても着くのは、確実にHR開始後どころかもしかすると1時間目にも遅刻してる時間かもしれないってこと」
「えっ!? うそっ、ボク、チャイム鳴る40分前の8時には学校来てるのに!? ここからアテムの学校までは30分あれば余裕で間に合うからって・・・・・・アテムもそう云ってたのに・・・」
 ボクが呆気にとられると、獏良くんはにこやかに笑って、ボクの頭をよしよしと撫でた。
「それは騙されたねぇ。あそこの学校ってさ、8時10分にはチャイム鳴るんだよ」
「な・・・・・・!?」
「ちなみに授業終わりもうちのが30分くらい早いの。さすが公立。それなのに終了5分前までにはいつも校門のところで待ってるってことは間違いなく最後の授業サボって来てるよねぇ」
「し・・・・・・信じらんない・・・・・・」
 頭を抱えて、ばったりと机に倒れこんだボクに、獏良くんがたのしげな声をあげる。
「ね、異常だよねぇ〜。もし血が繋がってなかったら確実に通報レベルだよ。あはは、よかったよねーアテムくん血縁でさ」
「・・・獏良くん、そこ笑うところじゃないよ〜・・・・・・」
「ごめんごめん。でも遊戯くんが気に病むことじゃないよ。本人が好きでやってるんだし、リスクだって覚悟のうえでしょ。・・・あ、いや、遊戯くんとほかの何かを秤にかけること自体しないのか。あそこって成績さえ良ければ素行はあんまり重視しないみたいだし、大丈夫なんじゃない。アテムくんって成績はいいんでしょ?」
「・・・・・・うん、入試一位だったから新入生代表の挨拶頼まれてた。そういうの嫌いだからって断ってたみたいだけど・・・。試験でもいつも学年トップみたい。運動神経もいいのに部活とか入らないから助っ人の依頼がひっきりなしだし」
「へえ、すごいじゃない。引き受けてあげてるの?」
「・・・・・・・・・・・・ボクが応援に行くなら、やるって云うんだ」
「あーだからしょっちゅう遊戯くん週末いないのか」
「だ、だって、せっかくアテムのこと頼ってきてくれてるのに悪いじゃない・・・! もしかしたら、そこから新たな出会いがあって、友だちもできるかもしれないし!そ、それにいろんなひとと付き合うのもアテムにとってはきっといい経験に・・・!」
「あはは、わかったわかったよ」
 ボクがあわてて弁解すると、獏良くんは明るい笑い声をあげた。
「・・・何だかんだ云ってもさ、やっぱり遊戯くんってアテムくんのことだいすきなんだね」
「えっ・・・・・・う、うん・・・だって大事な家族だし、ボクにとってはすごく大切な存在なんだもの・・・」
 改めてひとから指摘されると照れくさくて、俯きながら答えると、頭上で「・・・チッ」という音が聞えて、驚いて顔をあげたけれど、目の前にいるのはにこにこと笑顔の獏良くんだけだ。
「ん? どうかしたの?」
「え!? あ、あの・・・なんか音が聞えた気がしたんだけど・・・舌打ち、みたいな・・・」
「え〜気のせいじゃない? それか、ほら、きっと鳥の鳴き声とかがそう聞えたんだよ」
「そ、そうかなあ・・・・・・」
「そうだよ〜。ね、それより、遊戯くんシュークリーム食べない? 昨日買ってきたばっかりでさ、すっごいおいしいんだよ〜! これは今まで食べたなかでも五本の指に入るね!」
 そう云って、ハイ遊戯くんの分!と笑顔で差し出されたシュークリームを受け取って、わあ!とボクも歓声をあげた。
「わー知ってる! これ隣町に新しくできたお店のやつでしょう? ボクもテレビで見たことあるよ〜すっごい美味しいって評判だよね。それにすっごい並ぶって・・・・・・え、貰っちゃってもいいの・・・?」
「もちろん。ボクが遊戯くんと一緒に食べたいんだから気にしないで」
「!! ありがとう獏良くん、ボクすっごくうれしいよ!」
 一口ぱくりと食べてみると、シュー生地はさくさくだし、中のカスタードと生クリームはとろけるくらい甘くてすごくおいしかった。誰でもそうだと思うけれど、おいしいものを食べると、最高にしあわせな気分になれる。
「うっわー、すっごいおいしい!」
「でしょ〜。中のクリームがいいんだよね〜ほどよい甘さっていうか・・・過度に甘ったるいわけじゃなくて、ほんっとに丁度いい感じでさ。生クリームとの合わせが絶妙なのかな・・・どういう配合してるんだろ・・・・・・」
 ぶつぶつと呟きながら真剣にシュークリームを見つめる獏良くんは、甘いものがだいすきで、なかでもシュークリームがいちばん好きらしい。いつも学校にお菓子を持ってきていて、ボクにお裾分けをしてくれる。
 獏良くんのお菓子への情熱は生半可なものではなく、今日みたいな生菓子の場合はちいさなクーラーボックスにドライアイスを詰めてまでして持ってくるのだ。ときどきは、自分でつくったりもするのだからすごいなぁと思う。このあいだ食べさせてくれたマフィンも絶品だった。
「でもよく買えたね〜。だってこのお店のって朝一で並んでやっと買えるかって感じなんでしょう?」
「ああ、でもぼくが並んだわけじゃないからさ〜」
「え?」
 ボクがきょとんとすると、獏良くんは二個目に手をつけながら、こともなげに答えた。
「うちのバカがこないだ晩御飯の担当だったのにゲームやっててさ、ほらこないだ発売したRPG、主人公が親友のうしなわれた記憶を取り戻すために過去へタイムスリップするってやつ、あれに熱中するあまりにすっかり準備を忘れたらしくてね。おまけにぼくが帰ってきてあわてて終了させたもんだから、ぼくの3周目のレベル上げMAXの最凶データに上書き保存しやがってさ〜」
「うわああ・・・・・・あれって結構クリアに時間かかるよねぇ・・・戦闘がすっごい難しいしさあ」
「ほんっと最悪だよね!ぼくの380時間を返せって感じ!! とりあえずその日は家から叩き出してやったんだけど、それだけじゃ全然腹の虫が治まらないしさ。そのまま荷物まとめて出て行かせようかと思ったんだけど、それだけは勘弁してくれって土下座して謝ってくるからさあ〜、まあぼくもそこまで鬼じゃないし、とりあえず一週間は馬車馬のごとく扱き使うってことになったの。だから手始めに、長蛇の列で有名なスイーツのきなみ買いに行かせようと思って!」とうきうきしながら云う獏良くんは最高にいい笑顔をしていて、ボクは苦笑いするしかないのだった。
「その、“バカ”って獏良くんの・・・」
「ん? ああ愚弟。すごくつらい現実なんだけど、残念なことに血が繋がってるんだよねぇ」
「でも結構仲いいんでしょ?」
「えー普通じゃない? 昔はよくつっかかってきたけど、上下関係ってものを思い知らせてやったらすこしは大人しくなったし」
(獏良くんの弟くんもたいへんだなあ・・・・・・)
 ボクがぼんやりとそんなことを思っているうちに、獏良くんの手は三つめのシュークリームに伸びていた。
「まぁうちもそこそこ特殊な感じだから基準にはならないかもしれないけど、それにしたってアテムくんのブラコンっぷりは異常だと思うよ」
「・・・・・・うう〜ん・・・・・・違う学校だから余計にそうなるのかなぁとは思ったんだけど」
 パック牛乳を飲みながら、そう弁解すると、獏良くんは首を振る。
「うちも学校違うけど、別にあいつの生活がどうかなんて興味ないしぼくには関係ないもん」
 シュークリーム片手ににっこりと花のように笑顔を浮かべながらものすごいことを云う獏良くんを見ながら、ボクはぼんやりと、きれいな花には棘があるってほんとうなんだなあ、とか考えていた。
「あ、遊戯くん、ほっぺにカスタードついてるよ」
「えっ、どこ!!?」
 ボクが慌てて顔を擦ると、そっちじゃなくてここだよ、と笑って、獏良くんはボクの手をつかんで、頬をぺろりと舐めた。突然のことに驚いて固まるボクをよそに、獏良くんは、うん、甘くておいしい、ととろけそうな顔でうれしそうに微笑んだのだった。





*おまけの獏良家*

「たっだいまあ〜」
「・・・・・・」
「・・・いるなら、『お帰りなさいませ〜』くらい云ったらどうなの? ご主人様のお帰りだよ?」
「誰がご主人様だっつの!」
「やっぱりいるんじゃないか。返事くらいしなよね。おまえ、自分の立場わかってる? 別にぼくはいつ追い出したっていいんだけどなあ〜」
「・・・オ帰リナサイマセ」
「うわーすごい機械音声。くだらない反抗心だね!」
「うるせぇー・・・・・・」
「それより買ってきてくれた? 一日限定30個の黄金アップルパイ!」
「・・・この疲労っぷりを見てわかんねぇのかよ・・・・・・あーもうなんで、ンな菓子ひとつのために半日潰して延々と店の前に並ばなきゃならねぇんだ・・・・・・ってオイ聞けよ!」
「うっわ〜!!すっごいおいしそー! さすが名店ってだけあるよね、お手柄お手柄。ご苦労さん」
「・・・かっるいねぎらいだなぁオイ・・・・・・もうちょっと云い方ってもんがあるだろーよ」
「あ〜オーブンでちょっとあっためてから食べようかな! でも冷やしても美味しいかも。ふふふ、たのしみだなあ」
「ちょっ、聞けっつの!」
「明日もってったら、遊戯くん喜んでくれるかな〜」
「・・・・・・・・・アップルパイ好きなのか?あいつ」
「うわそういうとこだけ反応早いよね。これだからストーカーは」
「だっ、誰がストーカーだっつの!!」
「街中で一目惚れしたからって、相手の跡つけて家までつきとめちゃうようなやつのことをほかになんて云うのさ」
「・・・・・・べ、別にそういうつもりじゃ・・・!」
「そうだよねえ〜話しかけようと思ったけど結局勇気がでなくって、機会を窺ってるうちに家に着いちゃっただけだもんね。ヘタレだからね〜バクラは」
「・・・・・・・・・なんか今日機嫌わるくねーか」
「・・・ちょっとね。“アテムくん”があそこまでひどいブラコンだとは思わなかったからさ。あ、ねえ、おまえ同じ学校にいるんだから、ちょっと足止めくらいさせてみてよ。彼がお迎えに来る限り、遊戯くんをうちに呼ぶこともできやしないんだから」
「アテムって・・・・・・ああ、ファラオか」
「なにそれ?」
「あいつのあだ名だよ。成績優秀、眉目秀麗、運動神経抜群、ちょっとからだが弱くて遅刻早退が多いってのを除けば先公どもの受けもピカイチ。そんでついた呼び名が王=ファラオ」
「・・・病弱とはよく云ったもんだね。まあ病気には変わりないだろうけどさ」
「まさかあいつが遊戯の双子のきょうだいだとはな・・・・・・あいつに似なくてほんっとによかったぜ」
「ほんとだよね〜。あー遊戯くんって、ほんっとかわいいよね〜。今日ほっぺた舐めたら、マシュマロみたいにふわふわでさ、きょとんとした顔でこっち見てるの。あ〜写真撮っときたかったなあー」
「舐め・・・ッななななな、なにしてんだよ・・・!!?」
「うるさいなあ、ぼくが遊戯くんと何しようとぼくらの勝手でしょ。それにしても問題はそのファラオだよねえ・・・・・・突然クラスメイトに頬のクリーム舐めとられたっていうのにあの反応の薄さは恒常的にファラオに同じようなことをされてると見たね。ほんっとに邪魔だなあ・・・・・・ふふふ」
「・・・・・・・・・・・・黒い顔してんなー・・・本性出して遊戯に嫌われてもしらねーぞ」
「そんな間抜けなへま、ぼくがするわけないだろ。お前じゃあるまいし」
「るせぇ!おれだってなんもしてねーだろ!!」
「そうだね。おまえ話しかけたりもしてないもんね。へまする以前の問題?」
「ちくちく来んなーオイ・・・・・・」
「云われたくなきゃ、さっさと行動するんだね。遊戯くんをうちに呼んでほしかったらファラオをなんとかすることが必須」
「あのなあ・・・・・・朝から行列に並ばされて学校もロクに行けてねぇおれにどうしろっつんだよ」
「その頭が、無駄にはねてる髪の毛を被せておくだけのカツラ掛けかなんかじゃなきゃ、なにかしら思いつくでしょ。まぁせいぜい考えるんだね。じゃあぼくお風呂はいってくるから晩御飯の準備よろしく。あ、ぼくのセーブデータに触ったら今度こそ追い出すからね」
「・・・・・・触んねーよもう・・・・・・・・・・・・」



ということでブラコン王様話を始めてみました\(^o^)/
AIBOがものすごく総愛されな話が読みたかったんです。なんという自給自足畑・・・
ほんとは高校時代メインで、これはちょっとした過去回想のつもりだったのですが
獏良くんを書くのがたのしくてたのしくて・・・・・・気付いたら乗っ取られました(・・・)
たのしさのあまり獏良くんがものすごく毒舌家に。いやでも腹黒かわいこちゃん攻めっていいと思うんです(真顔)
そしてバクラが不憫ですみません(笑)
城之内くんとか社長とかマリクとか御伽とか色々出したいです・・・続くと・・・いいね!(・・・)
2007.11.25