Treasure in the Cage

たからものは鍵付き宝石箱のなかに





「―――ただいま遊戯くん、イイコにしてた?」

 にっこりと笑顔で扉を開けながら、ぱたぱたとスリッパで足音を立てて、獏良が部屋のなかに入ってくる。部屋の中心にでんと据えられたベッドのうえで横たわっていた遊戯がその声にのそりと上半身を起こすのを手伝いながら、獏良はベッドの端に腰掛けた。二人分の体重を受けて、ベッドはぎしりと軋んだ音を立てる。
「ごめんね遅くなっちゃって、さびしかったんじゃない?」
 その言葉に、遊戯はわずかに苦笑してみせる。
「ちょっと買い物に行ってきただけでそんなこと思わないよ、ほんの三十分くらいでしょう?」
「ぼくがこの部屋を出てから三十二分と二十九秒、だよ」
 そう云って、獏良は遊戯の目じりに口吻けた。遊戯がくすぐったそうに目を細める。
「ぼくは遊戯くんがいなくて、すごくさびしかったよ。遊戯くんは知らないかもしれないけど、ぼく、遊戯くんがいないと生きていけないんだ」
 耳のすぐ傍でそんな睦言めいた台詞を囁く獏良に遊戯はこらえきれないというふうに笑った。「・・・知ってたよ」
 その反応に獏良は満足そうに頷く。知ってるならいいんだ、ぼくほんとうに遊戯くんなしじゃだめなんだよ、遊戯くんがいない世界なんてぜんぜん意味がないんだ、そんな世界いらないよ。
 ああ、ほんとうに遊戯くんはかわいいね、きみの髪も瞳も頬も唇も指先も、ぜんぶすきだよ、きみを形づくるものすべてが愛しくてたまらない。
 心底愛おしいと云わんばかりに、とろけそうに愛で煮詰められた視線を遊戯に向けて、獏良は微笑む。その細い指先で遊戯の髪を撫ぜ、頬に触れ、輪郭線をなぞる。
「遊戯くん大好きだよ。ほんとにほんとに君のことが好きでたまらないんだ」
 うっとりとした表情で獏良は遊戯の頬に唇を寄せる。遊戯はそっと目を瞑り、さっきと同じ言葉を繰り返した。
「・・・うん、知ってる」
 恍惚の溜め息を漏らしながら獏良は遊戯の首に手を伸ばした。遊戯の白く細い首に嵌められたがっちりとした黒革の首輪。ああなんてすばらしいコントラストだろうと獏良は心の中で呟く。細い首、細い手足、おおきな瞳、白い肌、指先、桜色の頬、ああきみのすべてがぼくのすべてだ。ぼくの最高にきれいで大切な宝物。
 ああ遊戯くん、と名前を呼びながら獏良は遊戯を抱きしめる。じゃらりと鎖が音を立てた。
「ねぇ約束してね遊戯くん。ずっとここにいるって。ずっとぼくと一緒にここで、ぼくから決して離れないって。ぼくだけを見つめてぼくだけの瞳に映ってぼくだけを愛して。ぼくを置いてゆくなんて絶対にだめだよ。そんなのゆるさないからね。きみはここでずぅっとぼくと一緒にいるんだよ。ね、そうでしょう遊戯くん?」
 遊戯の首筋に顔を埋めながら、獏良は少女めいたくすくす笑いを零した。だって約束したもんね。
 ゆっくりと目を開け、遊戯は獏良の真白い髪をそっと手で梳きながら頷いた。
「・・・うん、ちゃんとここにいるよ。きみが大切だから、ここにいる・・・・・・」
 遊戯のまなじりに光るもののほんとうの意味を知らないまま、獏良はしあわせな夢に溺れて、ゆっくりと目を閉じた。


きみを抱き締めたいキスしたいずっと腕の中に閉じ込めていたいだってぼくはきみのことを愛しているんだ世界中の誰よりも何よりもきみだけをきみだけがぼくのたからもの



もうどうにも躁鬱狂気攻めがだいすきでして(真顔)
似たようなことばかりしていて申し訳ない・・・
相棒が大人しくしているのは、獏良くんを“友人として”大切に思っているからです
2008.09.17