He didn't say anything
彼はなにも云わなかった
遊星はなにも云わなかった。 ただきゅっと唇を引き結んで、瞳を閉じただけだ。 ありがとうもさよならも愛の告白も別離の挨拶もなにも遊星の口から零れはしなかった。 遊星はジャックの言葉にちいさく頷き、そうしてようやく呟いた。 「そうか、わかった」 それだけだった。 遊星はDホイールを弄りながら彼に背を向けたままだったから、ジャックが苛立たしげに目を細めたことも、その瞳に傷ついた色が浮かんでいたことも知らなかった。 ジャックはわずかに唇を噛み締めてこたえた。 「ああ、」そうして何かを云おうと口を開いたものの、結局ジャックもまた、その言葉を捨ててしまった。「・・・じゃあな、遊星」 カツカツと靴音を響かせて、ジャックは遊星の元から去っていった。 その音を聞きながら遊星は瞳を閉じ、コンクリートの隙間から星空を見上げた。 ガスにけぶる星空はけして美しいとはいえなかったけれど、ここは遊星の故郷にちがいなかった。 だから遊星はここを捨てられなかった。 ジャックが遊星に望む言葉を知っていたけれど、それに答えることはできなかった。 遊星はいまでも考える。 あのとき捨てた言葉をジャックに告げていたらどうなっていたのだろうかと。 けれど時間はもどることはなく、ジャックも、Dホイールも、スターダストも遊星はうしなってしまった。 遊星はうしなった言葉について考える。 あのときジャックに告げられることなく捨てられた言葉は、どこへいってしまったのだろうかと。 遊星はすきだと云わなかった。 |
日記に書いた短文。初めと終わりの一文がやりたかっただけです・・・。
UPするのをすっかり忘れていたら公式で別れ話出たので盛大に捏造乙という感じに・・・!(笑)
不動さんもジャックも二人とも好きだって云いたいけど云い出せないとか、
そんな感じだと萌えるなあとか思って書きました。少女漫画だなあ(笑)
2008.07.26
(2008.10.05UP)