The star always twinkles on any person.

 星はかがやく




 星は好きだ。
 遊星が住処にしている地下からも、天井のひび割れからそれは拝めるし、星だけは何処から見ても変わらない。
 何処にいても、金持ちでも下層市民でも、どんなやつでも見上げる星はおなじだ。
 そう云ったのは誰だろうか。遊星はキーボードを叩いていた手を止めて思う。確かあれは親友だった男の台詞だ。厭世的でシニカルな雰囲気をまとっていたあいつに似つかわしくない言葉にすこし驚いたのをおぼえている。遊星が不思議そうに目を瞬かせるのに、ニヤリと笑っていたその表情も。
「星はいい。いつだって何処にいたって変わらないからな」
 遊星はただ、そうか、とだけ答えた。黙ってジャックの隣に座り、夜空を見上げる遊星の頬に、ジャックが触れる。振り返ると、ジャックはいままでになく真剣な顔をして、まるで睦言でも告げるように、また死刑宣告でもするように厳かに呟いた。おまえも変わるな、遊星。たとえ何があっても。
 遊星は彼の真意を測りかねていた。ただ、友のあまりに真摯な瞳に圧されるように、ゆっくりと頷いた。そんな様子を見て、ジャックは満足そうに顎を引いた。おまえはそうでなくてはな。心底たのしげに喉を鳴らし、遊星の首筋に手を伸ばしながらジャックは笑った。・・・おれはそういうやつが好きなんだ。
 ―――ジャックが遊星のカードとDホイールを持って消えたのはその翌日のことだ。

 遊星は今でもあのときのことを思い出す。ジャックの台詞を、仕草を、表情を、触れた指先の温度を。まるで昨日のことのように思い出せるのに、なぜ彼があんなことを云い出したのかはあれからだいぶ経った今でもわからなかった。ただはっきりとしているのはジャックは遊星の元を去ったということだけだ。彼から大切なものをいくつも奪って。
 遊星は思う。おれはあいつに会ってどうしたいんだろうか。問い詰めたいのか、怒りたいのか、罵りたいのか、抱きしめたいのか、慈しみたいのか。いろいろ思い浮かべるけれど、結局そのどれもふさわしくないような気がしていた。おれがジャックに求めているもの。それはきっと会えばわかるだろう。彼の目の前に対峙したときに、遊星のなかからそれは飛び出してくる。
 エンジンを回し、駆動音を聞きながら天井を見上げた。コンクリートの隙間から星が覗き込んでいる。おなじ星を彼も見ているだろうか。推測でもただの願望でもなく、ジャックはきっと遊星をおなじようにこの夜空を見ているに違いなかった。だから遊星は夜空の星々から目を逸らした。流れ落ちる星に願う前に、まだまだやらなくてはならないことはそれこそ星のようにあるのだ。
 かつて親友だった男に会いに行くために。



捏造ってたのしいなあ(笑)5D'sのあの退廃した世界観がとても好きです・・・
ジャックと遊星って元々ライバルかと思ってたんですが、
1話での遊星の仲間の台詞でもしかしてジャックも仲間だったのかな?とか考えてみた。
あの地下んとこに一緒に住んでたら萌えるんじゃね?w
auは爛れた関係があってもいいと思っている^p^
(日記から再録)
2008.04.05