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Good Night,
.。.:*゚・.・゜ Darling*・゜゚・*:.。..。.:*・゚・:*
グッナイ、ダーリン
<2>
「遊戯、兄サマをたすけてあげて」 と初めてモクバに云われたのはいつだったろうか。あれはまだモクバが小学生の頃だったように思う。しんと静まり返ったおおきな屋敷の、広いベッドのなかであたたかな毛布に包まれながらモクバは遊戯の服の裾を掴んで云ったのだ。 「・・・海馬くんを?」 遊戯は驚いて目を瞬かせた。また彼はなにか厄介なトラブルに巻き込まれているんだろうか。海馬くんはトラブルに巻き込まれやすい・・・というか自分からトラブルのなかに突っ込んでいくタイプだからなあ、なんて考えていると、モクバはきゅっと眉を寄せて小声で呟いた。・・・おねがい、遊戯にしか頼めないんだ。 今にも泣き出しそうなモクバの頬に手をやり、遊戯はゆっくりと訊ねた。・・・どうしたの? やさしい声で笑いかけると、モクバは遊戯の手にそっと自分の手を重ねた。遊戯よりすこしちいさな、あたたかい手。 「兄サマ、最近仕事ばっかりで、ぜんぜん帰ってこなくて・・・・・・、磯野に聞いてもぜんぜん休んでないっていうんだ」 「全然って?」 「全然は全然だよ。寝なかったり、寝ても二時間くらいだったり。そんなのが二週間も」 「二週間も!?」 遊戯は呆れて口をぽかんと開けた。前々からワーカホリックな節はあったけれど、ここまでひどいどは思わなかった、と遊戯も眉を寄せる。普通の仕事中毒者と違うのは海馬がこんなにも自分を切り詰めてまで働く理由が単なる仕事への愛や情熱ではなく、夢への目的意識のためということだろうか。仕事仕事で学生の頃から学校に来ることさえ稀だった海馬だが、それにしても二週間もほとんど眠らないで仕事ばかりしていたらいつかはガタが来るに決まっている。 脳裏に残る横顔を思い出して遊戯は溜め息を吐いた。海馬にはきっと想像力が足りないのだ。無理ばかりする海馬を、彼の大切な弟がどんなふうに思っているか、どれだか心配しているか。それがわからないから何度でも無理をする。 「磯野が休んだらどうですかって云っても全然聞いてくれないんだって。このプロジェクトのきりがついたら、ってそればっかりで・・・。兄サマいまアメリカだからおれは傍に行けないし、電話でいくら云っても『問題ない』って云うだけでちっとも聞いてくれないんだ」 でもこのままじゃ倒れちゃうよ、とモクバは唇を噛みしめた。モクバは心配なのだ。たったひとりの大切な兄になにかあったら・・・けれどまだ子どもなモクバにできることはとてもすくない。でも、子どもだからこそできることもあるのだ。 大切な兄のために、モクバは困ったように自分の頬を撫でる遊戯の手をぎゅっと握った。 「だから頼むよ、遊戯が云ってあげて。兄サマに」 「・・・・・・ボクが?」 驚いたように云う遊戯に、うん、と頷いた。 困惑したようにモクバを見つめる遊戯は知らないのだ。自分がどれだけモクバにとって、そして兄にとって大切な存在か。まるで太陽みたいに何があっても変わらずに、笑って手を伸ばしてくれる存在を自分たちがどれだけ待ち望んでいたか。 「遊戯、明後日の便でアメリカに行くだろ?」 「うん、世界大会があるからね。決闘王が来ないとは何事だ、って海馬くんに怒られちゃったし」 わがままで困ったひとだね、と云いながら遊戯はぜんぜん困ったように見えない顔で笑った。その顔があんまりにもやさしいからモクバは泣きたくなってしまう。俯いたモクバの頭を撫でながら、どうしたのモクバくん、と遊戯はやさしく問い掛けた。 遊戯は涙の気配にとても敏い。モクバが泣きそうになってそれを隠そうとしても遊戯にはすぐにわかってしまうのだ。それを遊戯は「ボクも泣き虫だからわかるんだよ」だなんて云って笑っていたけれど、ほんとうはそうじゃないことをモクバはちゃんと知っている。遊戯はとてもやさしい。だからひとが傷ついている気配に敏感に気づいて、すぐに手を差し伸べてくれるのだ。強いと思う。遊戯はつよくなった。・・・もしかしたら強くならざるをえなかったのかもしれないけれど、とモクバはすこし考える。光の中に去っていった“彼”の後ろ姿はいまの遊戯ととてもよく似ていた。ピンと伸びた背筋で真っ直ぐ前を見つめている、あの・・・・・・。 あれ以来モクバは遊戯の涙を見たことがなかった。すくなくとも人前で遊戯が泣くことはない。 (・・・なら、遊戯はいったいいつ泣くんだろう・・・・・・) ゆうぎ、と掠れた声で名前を呼ぶ。うん?と微笑んだ表情がやさしくて、モクバは息を詰まらせた。 「・・・・・・おれも、すごくわがままなんだ」 「そうかな?」 「そうだよ。だから、だからもし遊戯がいやだったら断ってもいいんだけど・・・」 「うん」 「もし、もしできたら明日の飛行機で発てたりしないかな」 「うん。明日?」 「そう・・・それで、兄サマのところにいってあげてほしいんだ」 「うん」 「きっと、兄サマも遊戯がいたら眠れると思うんだ。兄サマに会って、ちゃんと休んでって云って、いやだって云われても無理矢理にでもべッドに入れちゃってさ」 「うん、・・・でもボクにできるかなあ」 笑いを滲ませた声で遊戯が云った。 「海馬くんが本気でいやがったらボクなんて吹っ飛ばされちゃうよ、ぽーんって」 想像してモクバも笑った。発作じみたくすくす笑いが静かな部屋に染みこんでゆく。 「大丈夫だぜ、遊戯ならさ」 「そうだといいけどね」 「・・・行ってくれるのか?」 おそるおそるモクバが問い掛けると、遊戯は驚いたように目を丸くし、笑った。 「さっきからボク何回も『うん』って云ってるじゃない!」 「海馬くんに会ったら子守唄でも歌ったほうがいいかな」 でもボクあんまり歌が得意じゃないんだけど・・・と遊戯が真剣な表情で、内緒話でもするように云うのにモクバは笑って首を振った。 「そんなの歌わなくたって大丈夫だぜィ! 遊戯は兄サマに会いに行くだけでいいんだ」 「・・・それだけでいいの?」 心配そうに眉を寄せる遊戯の胸元にぎゅっと顔を押し付けてモクバは云った。 「いいんだって! 遊戯が傍にいてくれたら、きっと兄サマ眠れるよ」 モクバの言葉に遊戯は驚いたように目を開き、そうだといいな、と笑った。 「絶対そうだぜ!」 だって、とモクバは遊戯の腕の中に顔を埋めながら思う。心音が聞えるほど近くに遊戯の体温を感じて、モクバはうとうとと目を閉じた。 (・・・だっておれは遊戯と一緒ならいつだって安心して眠れるんだ) 遊戯が絶対にモクバを傷つけないことを知っているから。泣くのも笑うのも遊戯のまえなら簡単だった。遊戯のまえでは“副社長”だとか“海馬瀬人の弟”だとかそういう鎧を一切投げ打って、ただの“海馬モクバ”としていられる。それはとても心地良かった。 だから、兄も同じだと思ったのだ。遊戯のまえでは緊張も牽制も必要なく、ただの“海馬瀬人”になれる。自分にとって遊戯が特別であるように、兄にとっても遊戯は特別に違いなかった。 モクバは知っているのだ。人前では絶対にうたた寝なんてしなかった兄が遊戯のまえではあっさりと安らかな寝息を立ててしまうことを。遊戯の膝に頭を預けて眠る兄と、そんな兄を穏やかな顔で見つめる遊戯はまるでいつか画集で見た、ピエタ像みたいだった。 いまの自分も、誰かの目にはあの像みたいに映っているんだろうか、とモクバは考えたけれど、淡い思考は端から眠りに溶けていってしまった。おやすみなさいモクバくん、と囁きながら髪を撫でられる感触を心地良く思いながら、モクバは眠りについた。 すうすうと穏やかな寝息を立てるモクバの顔を見つめて、遊戯はこっそりと笑った。 「・・・ほんとにそっくりだなあ」 意外とあどけない寝顔も、ときどきひとをドキッとさせることを云うところも、まっすぐな視線も。 彼らのことをあんまり似てない兄弟だな、だなんて云うひともいるけれどこのふたりはそっくりだと思う。何よりもお互いのことを深く思いあっている、やさしい兄弟だ。 遊戯は海馬の不器用なやさしさも、モクバのそっと差し出されるようなやさしさも大好きだった。 ううん、とうなって首を竦めたモクバの肩に毛布を掛け直して、遊戯もベッドに沈み込んだ。 「・・・・・・おやすみ、モクバくん」 モクバに、そして彼の大切な兄であり、遊戯のかけがえのない友人にも、やさしい眠りが訪れることを願いながら。 →3 |
あっ作中で書くのを忘れたのですが、相棒は海馬邸に泊まりにきてます。
なかなか家に帰れない社長がモクバのために、ときどき様子を見に行ってくれと頼んだので
折りを見ては泊まりに行ったりしているというドリーム!w この二人は仲良しさんだといい・・・!
ナチュラルに一緒のベッドで寝てますが(笑)小学生が限界かなーと思ったのでそんな感じで。
モクバって結局DMのとき何年生だったんだろう・・・四年生くらいかなーと思ったんですが。
なのでこれは<1>から2,3年後ですね。相棒は高校卒業して決闘王としてバリバリやってます。
まだ社長と恋は始まってない(笑) <3>はGX時系あたりです~次でおしまい!
よろしければもう少しお付き合いくださいませ。
2008.06.10